『大般涅槃経』によれば、仏陀は、北に頭を向けて横になりました。
その姿勢で亡くなったので、日本では、『北枕は死者がするもので縁起が悪い』と言われるようになりました。
仏陀は何故、頭を北に向けて横になったのでしょうか。
実は、このことも、仏陀の真意と関連しています。
ヴェーダの世界観では、世界の中心に須弥山があり、その須弥山には神々が住んでおられるのでした。
須弥山のモデルと考えられていたのがヒマラヤ山脈です。
古代インドでは、ヒマラヤに神々が住まうと考えられていたのです。
ヒマラヤはインドの北にあります。
ですから、神々に失礼がないように、北に足を向けて寝ることはしなかったのです。
神に敬虔な人であればあるほど、頭を北に向けて寝たのです。
そして、仏陀もそうしたのです。
つまり、仏陀も北に住まわれている神々を敬っていたということです。
私の著書『仏陀の真意』でこう書きました。
『仏教徒は、バラモン教あるいはヒンドゥー教を非常に嫌います。
これは、部派仏教も大乗仏教も変わりません。
あたかも、仏教はバラモン教の全否定で成り立っているように思われています。
しかし、本当にそうでしょうか。』
仏陀は、亡くなるまでヴェーダ宗教を否定しておらず、神々のおられる北に足を向けずに頭を向けて横になったのです。
つまり、仏陀が、亡くなるときでさえ、頭を北に向けて横になったのは、仏陀がヴェーダの世界観を否定していなかった証左なのです。