2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

清水俊史著『ブッダという男』 ⑦(ブッダとはなにものなのか)

この本の眼目である、ブッダは平和主義者だったのか、男女平等論者だったのか、階級差別反対論者だったのか、という3つについて考察してきました。 まず、この本の著者は、今までさんざん強調されていた『ブッダの独自性、先駆性』について疑問を投げかけて…

清水俊史著『ブッダという男』 ⑥(ブッダは平和主義者だったのか)

この著者の『ブッダは平和主義者だったのか』という問いかけは、仏陀のみならず仏教界全体への言及がされていて興味深いものです。 著者は言います。 ※※※※※ 仏教は慈悲の教えであるーそう多くの仏教者が口を揃えて言う。 だが、長い歴史の中で、仏教が殺生や…

清水俊史著『ブッダという男』 ⑤(階級差別について)

カースト制度について この本でも取り上げられている仏陀の言葉があります。 パセーナディ王『四つの階級に差別はあるのでしょうか』 仏陀『私は、解脱には、何ら違いはないと説きます』 仏陀の考えはこの言葉に尽きていると思います。 カースト制度批判が、…

清水俊史著『ブッダという男』 ④(男女差別について)

さて、この『ブッダという男』という本の世間への最大の売りは、最近のブッダ研究が近代的価値観にあてはめて、ブッダは平和主義者で階級差別や男女差別を否定した先駆的人物としてきたことへの批判です。 それらの装飾を剥ぎ取ろうということのようです。 …

清水俊史著『ブッダという男』 ③(十二縁起)

私は、十二縁起を真正面からまともに解説している仏教書を見たことがありません。 はっきり言って、すべての解説は、適当にお茶を濁しています。 何故か。それは本人も分かっていないからです。 そして、十二縁起を瞑想しようとする者がだれもいないからです…

清水俊史著『ブッダという男』 ②(非我と無我)

この本には賛同するところは多いですが、 ただ根本的なところで私の考えと全く違うところがあります。 それは、『非我』か『無我』かというところです。 清水氏も挙げているように、仏陀は、 『眼(・耳・鼻・舌・身・意)は自己ならざるものです。自己なら…

清水俊史著『ブッダという男』①(独自性の誤り)

清水俊史氏という仏教学者が書いた『ブッダという男』という本が、仏教界で話題になっていますので、読んでみました。 アカハラ問題という社会的な話題も大きく寄与して注目度が極めて高い本です。 今までの仏教学や仏教常識に異論を唱えています。 その趣旨…