清水俊史著『ブッダという男』 ⑤(階級差別について)

カースト制度について

この本でも取り上げられている仏陀の言葉があります。

 

パセーナディ王『四つの階級に差別はあるのでしょうか』

仏陀『私は、解脱には、何ら違いはないと説きます』

 

仏陀の考えはこの言葉に尽きていると思います。

 

カースト制度批判が、仏陀の独創でも先駆性でもない、という著者の結論には、全面的に賛同します。

著者は、それは、沙門宗教に共通する思想性の一つだと言います。その通りです。

著者は、それは、バラモン階級が勢いを失ったからだと書いています。

ここの考察が十分ではないでしょう。

 

私は、ヤージュニャヴァルキヤの先駆性が生んだと思っています。

バラモン教でバラモン階級のヤージュニャヴァルキヤは、それまでの祭祀経典であったヴェーダ宗教を、『祭祀ではなく真理の知識によって涅槃に到達する』としました。

これにより、以降、祭祀経典ではなくウパニシャッド(奥義書)が主流になりました。

 

祭祀によらなくても解脱、涅槃に到達するという考えから、祭祀階級(バラモン階級)以外の階級から自由思想家が輩出しました。