中部経典の第17は、『山林経』です。
この経典は、最初を読むと、山林に住むことについての心得のように思えるでしょう。
しかし、実は、山林だけではなく、村、町、都市、地方のどれにおいても、そこに住むべきかどうかの基準が語られています。
それどころか、ある人と住むべきかどうかの基準も同じように語られます。
本当に語りたかったのは、山林よりも実は人の方だったと思います。
という点で、この経典の構成は面白いと感じます。
住むかどうかの根拠として、次の2つが考慮されるものです。
1,念(sati)が確立し、心が安定し、煩悩が滅尽し、最上の安らぎに到達しているか
2,衣・食・薬という生活必需品が容易に手に入るか
山林に住む時、
1も2もないときは、去るべきで住むべきではない。
1がなく、2があるときも、去るべきで住むべきではない
1があり、2がないときは、去るべきではなく住むべきである
1も2もあるときは、去るべきではなく住むべきである
これが
ある村の近くに住むとき
ある町の近くに住むとき
ある都市の近くに住むとき
ある地方の近くに住むとき
全く同じように考えます。
そして、ある人の近くに住むときも、この基準で考えるべきと説かれます。
すなわち、生活必需品が容易に手に入るかどうかはどうでもよく、念(sati)が確立し、心が安定し、煩悩が滅尽し、最上の安らぎに到達しているかを住むかどうかの判断基準にすべきということです。