出版業界について

本の価値とはどういうものでしょうか。

 

映画業界を喩えとしてみます。

現在、映画で名作と言われる作品は、制作費や広告宣伝費を膨大にかけたメガヒット作品にはほとんどありません。

例えば、今でこそ、名作中の名作と言われる『ショーシャンクの空に』ですが、上映時、興行的には鳴かず飛ばずでした。アカデミー賞などの賞にも無縁でした。

上映されて十年以上は全くの無名映画で、ごく一部のマニアで知られているくらいでした。

私が『ショーシャンク』というハンドルネームをつけたときもそれが映画の名前だと分かる人はほとんどいませんでした。

しかし、今では、名作と言えば、この映画がトップに上がります。

ほとんど誰でも知っている映画となりました。

アメリカでのレンタルビデオの口コミから徐々に徐々に評価されていったのです。

 

逆に、制作費や広告宣伝費を膨大にかけたメガヒット作品で名作と言える映画は、『タイタニック』くらいでしょうか。ほとんどありません。

 

日本映画はどうでしょうか。

これはさらに悲惨です。

日本映画の制作費ベスト10は、

1,ファイナルファンタジー

2,クライシス2050

3,20世紀少年

4,天と地と

5,落陽

6,敦煌

7,男たちの大和

8,復活の日

9,怪人二十面相・伝

10,ヤッターマン

どれも名作でないですね。

黒澤明監督が多大の制作費を使った『乱』『影武者』も内容的には完全な失敗作です。

 

この半世紀近く、日本映画(特に実写)から全く世界的な名作が出てこないのは何故でしょうか。

 

私は、それは、日本が豊かになりすぎて、日本国内の興行だけで十分ペイできる市場だからだと思います。

JPOPもそうですが、日本の国内市場が巨大なので、国内向けでヒットすれば十分成り立っていけるのです。

日本映画でいえば、ジャニーズ出身のタレントを主役にして、人気上昇中の女優をヒロインにして、広告宣伝にお金をかければ、内容はどうであれ、5億円の興行収入は見込めるのです。

このようにして次から次へと粗製濫造されていきました。

結果、世界を見据えた日本映画というものが出てこなくなり、もし監督にそういう気があったとしても、お金を出す映画会社がありません。

日本国内向けだけの興行を考えて作った方が楽に金儲けできるのです。

下手に世界など考えたら大コケする危険性が高まります。

こういう事情で、日本映画には世界的な名作は一切出てこないのです。

韓国のような国内の市場規模が小さい国では、世界市場を狙わないと採算に合いませんから、音楽でも映画でも、世界でどう受けるかを考えるのです。

つまり日本はぬるま湯だと言うことです。

 

出版業界はどうでしょうか。

これも同じですね。

テレビに出演している有名人には、出版依頼が殺到します。

どんな内容であれ、有名と言うだけで、ある程度の売上は見込めるのです。

出版社が出版や広告費用を全額負担する商業出版は、当然売上予測がすべての基礎になります。

出版社は商業的に成功しなければ自分の会社が潰れてしまいますから、売上見込みを優先します。

出版社と著者の関係は力関係です。

例えば、新人の漫画家であれば、ヒットするように、担当がいちいち注文してくるでしょう。

しかし、すでに有名でありその名前だけで売れるような漫画家には『書いていただく』という関係になりますから内容には何も言わないでしょう。

いずれにせよ、出版社として商業的には重版しなければうまみはありませんから、重版になるように、著者の人選やたっぷりとした広告宣伝などを考えます。

 

自費出版の場合は、著者は無名ですし、出版社は広告宣伝は一切しませんから、重版になることはほとんどありません。

私が調べたところ、重版になるのは、300冊に1冊以下の確率です。

それも、会社の社史とか会社創業者自伝とかの会社の経費で出版し取引先に無料で配りまくる企業案件を含めてのことです。

 

自費出版でなく普通の商業出版を考えてみると、やはり商業ベースに乗るかどうかが最大の判断基準です。

ある程度有名で、ある程度広告宣伝費をかければ、ある程度の売上になるというのは、出版業界も映画業界も変わりません。

 

しかし、日本は、そうやって粗製濫造してきたことのつけが、今来ているように思えます。

 

日本は世界の中での国力は相対的に低くなりつつありますが、それでもまだまだ、毎年膨大な数の出版がされています。

粗製乱造は昔も今も変わりません。

私は、すべての価値は時間が決めると思っています。

時間以外に判断する者などいません。

つまり、本で言えば、出版して何十年か経って、その時間に耐えられるか、ということです。

映画も音楽も他の芸術も同じです。

そのほとんどが泡沫のように消え去っていくでしょう。

もちろん、私の本もすぐにでも消え去っていくと思っていますよ。

消え去っても、自費出版の場合は100%自分のお金ですから、すべて自己責任です。

それを、誰かがたかだか誰でも出せる自費出版をしたからと言って、わざわざ他人のホームページで「本を書くことは恥をさらすことだ」と揶揄するのは、卑小な精神だなあとは思いますね。

自費出版などただの趣味ですから、一人カラオケが趣味の人にわざわざ「素人が歌を歌うのは恥をさらすことだ」と言うようなものですね。

プロの歌手はお金をもらって歌うのですが、趣味で一人カラオケする人は自分のお金で歌っているだけですので。

プロの歌手はお金を出してもらってますから、それが聴衆が聴くに耐えない出来なら責任は問われなくてはいけないでしょうけど。

 

自費出版の場合は、一冊も売れなくても、出版した時点で出版社は儲かるのです。著者から出版費用プラス利益分をもらっているからです。

しかし、一般の商業出版の場合は、大赤字になることは珍しくありません。

売り出した新刊本がコケたために倒産した出版社は今まで山のようにあります。

つまり、一般の商業出版では社会的な責任がありますが、自費出版の場合はあくまでも著者の負担で自己責任なので、出版社はくだらない自伝であっても出します。

ですから、自費出版の場合は全く売れないことがほとんどです。

それが、一般書店で店頭でふと手に取った人が買っていくというのは凄いことですし、ましてや自費出版で重版になるというのは奇跡的なことです。

多分、凡人さんというハンドルネームの人がマニカナで私の著書の『仏陀の真意』を『私にとって再認識させられた事柄が多く、とても役に立ちました。一度手にとってじっくり読んでほしい一冊です。』と書かれていましたので、シャン坊という人は『これはいけない!』と焦って否定しようと思ったのでしょうね。

 

否定したいのであれば、歓迎しますから、内容をちゃんと読んで、その上で、原始仏典を典拠に『この仏典にこうあるんで、この本のこの箇所は間違いだ』と論理的に指摘してくれればいいのですが、やり方が古参の人も地獄掲示板の人と同じく、理由も言わずに揶揄や貶しだけということで、ガッカリ感が半端ないですね。

 

『出版社の編集者が、昔は確かな選別をしていたが、今は学識不足』などと言っていますが、実際に出版社の編集者とバチバチやり合って自分の本を出した経験もない者が頭だけの想像で言っても何も意味ありません。しょせん、空想にすぎないからです。

裁判の経験もなく、実際に弁護士と仕事したり相手にしてやりあったりしたこともない、ただ法律の本をかじっただけの人がネットでは法律のアドバイスをしていることがありますが、経験に裏打ちされてない、ただの空想になってかえって害があることが多いです。

ネットでは何の経験もない人ほどわかったようなことを書き込むものです。

 

かなり失望しましたので、多分これからはほとんどマニカナは見ないかなと思います。

そうでなくても、新しくなってからは特にメインの『道場』で有益な対話が全くなされなくなりましたし、他の部屋でも他者への貶しばかりの雰囲気の悪い空間になってしまっていますね。

 

何か、仏教やキリスト教をしている人の方が雰囲気がよくないのは非常に考えさせられる問題です。