中部経典の第12は、『大獅子吼経』です。
この経典は、仏陀が80歳、つまり入滅の年に説かれたらしく、仏陀自身の智をさらけ出したような内容です。
この説法を聞いていたナーガサマーラと言う尊者が聞いて『身の毛がよだった』ということから、『身毛のよだちの教え』と受け止めなさいと仏陀が言ったということです。
しかし、種々様々な教えが出てくるので、何が言いたいのか、その核がわからなければ難解な経典でもあります。
この経典は、『沙門ゴータマには、人法を超えた最勝智見がない』という誹謗に対し、自らの智の全貌を説き明かしたものです。
入滅の年、最晩年だったからこそ、自らの智の全貌をさらけ出したとも言える、まさに『身の毛がよだつ』教えとなりました。
仏陀のサンガを離れ、還俗したばかりのスナッカッタが仏陀の悪口を言いふらします。
『沙門ゴータマには、人法を超えた最勝智見がない。』という誹謗をします。
それに対し、仏陀は弟子に、自ら得ているものをこう説きます。
まず、仏の十徳、これは仏の十号と同じです。
つぎに、神足通、天耳通、他心通。
つぎに、如来の十力が明かされます。
- 処非処智力 - 道理と、非道理との違いをはっきりと見分ける力
- 業異熟智力 - 業とその果報因と果の関係を知る力
- 静慮解脱等持等至智力 - 禅定を知る力
- 根上下智力 - 衆生の精神の優劣を知る力
- 種種勝解智力 - 衆生のまことの望みを知る力
- 種種界智力 - 衆生の本性を知る力
- 遍趣行智力 - 衆生が地獄や涅槃など種々に赴くことになる行因を知る力
- 宿住随念智力 - 自分や他者の過去世を思い起こす力
- 死生智力 - 衆生が死ぬ道理、むこうに生まれる道理を知る力
- 漏尽智力 - 涅槃に達するための手段を知る力
つぎに、如来の四無畏が説かれます。
一切智無畏・漏永尽無畏・説障道無畏・説尽苦道無畏の4つの無畏です。
(続きます)