中部経典『サーレッヤカ経』

中部経典の第41は、『サーレッヤカ経』です。

 

サーレッヤカ(Saleyyaka)とは、サーラー村の村民の意味です。

サーラー(Sala)という村で説かれました。

 

サーラーに住むバラモン資産家たちは、世尊にこう言った。

『ある生けるものたちは、身体が滅ぶと、死後、苦処・悪道・破滅の地獄に生まれかわりますが、その因は何でしょうか。縁は何でしょうか。

 ある生けるものたちは、身体が滅ぶと、死後、善道の天界に生まれかわりますが、その因は何でしょうか。縁は何でしょうか。』

 

『非法行・不正行によって、ある生けるものたちは、身体が滅ぶと、死後、苦処・悪道・破滅の地獄に生まれかわります。

法行・正行によって、ある生けるものたちは、身体が滅ぶと、死後、善道の天界に生まれかわります。』

 

この後、非法行・不正行の詳しい内容が説かれます。

 

身による非法行・不正行が、3種。

語による非法行・不正行が、4種。

意による非法行・不正行が、3種。

この十不善業が語られます。

 

身による非法行・不正行は、殺生・盗み・邪淫の3種。

 

語による非法行・不正行は、

【妄語】知っていることを知らないと言い、見ているのに見てないといい、見てないのに見ていると言う。自分のために他人のためにあるいはわずかな利益のために故意の妄語者となること。

 

【両舌】和合している者たちを離反させ、分裂させるように、あちらで聞いてこちらで話、こちらで聞いてあちらで話すこと。

 

【悪口】粗暴で粗野で、他を苦しめ、他を不機嫌にさせる、怒りを伴った、定に資することのない言葉のこと。

 

【綺語】ふさわしくないときに語り、事実でないことを語り、意義のないことを語り、非法を語り、心に残ることのない、意味を伴わない言葉。

 

 

意による非法行・不正行は、貪欲・瞋恚・邪見(顚倒見)の3種。

貪欲は『どうか他人のものが私のものになるように』

瞋恚は『この生けるものらは害されよ。殺されよ。破壊されよ。』

邪見は『布施されるものはない。善悪の果報はない。この世はない。あの世はない。沙門バラモンは世にいない。』

 

それに対し、死後、善道の天界に生まれかわる因であり縁である法行・正行とは、これらの非法行・不正行から離れること、と説かれます。

 

そして、この法行者・正行者であれば、兜率天であれ梵身天であれ、光天であれ、夜摩天であれ、色究竟天であれ、生まれ変わることができると語ります。

さらに、空無辺処天、識無辺処天、無所有処天、非想非非想処天であれ生まれ変わることができる。

そして、もしこの法行者・正行者が

『もろもろの煩悩の滅尽により、煩悩のないこころの解脱、慧による解脱を、現世のうちに自らよく知り、目の当たり見、成就して住むことができますように』と希望すれば、それができる、それは法行者・正行者だからだ、と説かれます。