中部経典の第32は、『大ゴーシンガ経』です。
これは、前編の『小ゴーシンガ経』と同じ、ゴーシンガのサーラ森林にて説かれたものです。
『小』のほうは、釈尊と3人の比丘(アヌルッダ、ナンディヤ、キミラ)が登場人物でしたが、『大』は、オールスターです。
サーリプッタ、マハーモッガッラーナ、マハーカッサパ、アーナンダなどの長老が勢揃いです。
サーリプッタがそれぞれの人に問いかけます。
『このゴーシンガのサーラ森林は楽しいところです。夜は明るく、サーラの花は満開し、天の香りのように馥郁としています。友よ、どのような比丘が、ゴーシンガのサーラ森林を輝かすことができるでしょうか?』
アーナンダ『多聞の比丘でしょう。』
レーヴァタ『禅定の比丘でしょう。』
アヌルッダ『天眼の比丘でしょう。』
マハーカッサパ『頭陀の比丘でしょう。』
マハーモッガッラーナ『2人の比丘が勝れた法の話をし、互いに質問し、互いに質問に答え、放棄することがなく、法に関する話が進んでいきます。そのような比丘が輝かすことができます。』
ここで、マハーモッガッラーナはサーリプッタに同じ質問をしました。
サーリプッタ『心を自在に使い、しかも心の自在にならない比丘でしょう。』
答えが出そろったところで、釈尊のもとに行って聞きます。
釈尊は、そのすべての答えを褒めます。
どの人の答えに対しても、
『よいことです。よいことです。正しく答えることができています。』と。
サーリプッタは聞きます。
『誰のものがよく語られているでしょうか?』と。
釈尊は答えます。
『そなたたちのすべてのものは、道理によってよく語られています。
しかし、私の言うことも聞きなさい。
サーリプッタよ、ここに、比丘が、食後、托鉢食を離れ、跏趺を組み、まっすぐに身体をたもち、全面に念を凝らし〈私は、とらわれがなくなり、もろもろの煩悩から心が解脱しない限り、この跏趺を破らない〉と坐ります。
このような比丘が、ゴーシンガのサーラ森林を輝かすことができます。』
これは素晴らしい説法です。
弟子たちはそれぞれの特徴を言っていきます。そのような性質、能力が輝かすことができるのだ、と。
釈尊がそのすべてを褒めながら、最後のこの言葉はやはり他を圧しています。
これは釈尊ご自身が、菩提樹下に坐ったときの決意です。
このような決意ができるものが本当に輝かすことができる、ということなのでしょう。