仏陀は、6年間にわたる苦行(断食行と止息行からなる)は、何ももたらさないと考え、スジャーターからもらった乳粥を食べ、瞑想に入ります。
そこで、四禅を行じ、三明を得ます。
この三明こそ、仏陀の悟りを解き明かすものです。
仏陀が言う一切智とは三明のことです。
三明とは、宿住智、天眼智、漏尽智のことです。
【宿住智】についての記述
わたしは欲するままにさまざまな過去の生存を思い起こす。
すなわち一つの生涯、二つの生涯、三つの生涯、四つの生涯、五つの生涯、十の生涯、二十の生涯、三十の生涯、四十の生涯、五十の生涯、百の生涯、千の生涯、十万の生涯、幾多の消滅の劫、幾多の生成の劫、を思い起こす。
そこにおいては、わたしはこのような名前であり、このような姓であり、このような種族であり、このような食べ物を食べ、このような安楽と苦痛を感受し、このような寿命をもっていた。
そのわたしはそこから死没してこのところへ再生し、そこでも、このような名前であり、このような姓であり、このような種族であり、このような食べ物を食べ、このような安楽と苦痛を感受し、このような寿命をもっていた。
そのわたしはそこから死没し、この世へ再生した。
このように様々な過去の生存を、様相と細かな状況ともども、思い起こす。
【天眼智】についての記述
私は欲するままに、清浄であり人の能力を超えた天の眼によって、死につつあり再生しつつある生ける者たちを見る。
劣っている者、優れている者、美しい者、醜い者、幸福な者、不幸な者、業に従って行く生ける者を知る。
『あなたたちよ、これらの生ける者は身体による悪行をそなえ、言葉による悪行をそなえ、心による悪行をそなえ、貴き人を誹謗し、邪な見解を抱き、邪な見解にもとづき業を行なう。かれらは、身体が壊れた死後、喪失の世界、悪い境涯、堕ちる世界、地獄に再生する。
あなたたちよ、これらの生ける者は身体による善行をそなえ、言葉による善行をそなえ、心による善行をそなえ、貴き人を誹謗せず、正しい見解を抱き、正しい見解にもとづき業を行なう。かれらは、身体が壊れた死後、よい境涯、天の世界に再生する。』と。
このようにかれは清浄であり人の能力を超えた天の眼によって、死につつあり再生しつつある生ける者たちを見る。
劣っている者、優れている者、美しい者、醜い者、幸福な者、不幸な者、業に従って行く生ける者を知る。
『漏尽智』についての記述
わたしは煩悩の漏出を消滅し尽くして、煩悩の漏出のない、こころの解脱(心解脱)と智慧による解脱(慧解脱)を現世において自ら知り、体現し、到達している。
これが、宿住智、天眼智、漏尽智の三明です。
仏陀は、この三明こそが一切智であると言っています。
三明の他に一切智はないのです。
つまり、三明こそが、仏陀が悟った核心なのです。