中部経典『布喩経』には、歴史上の仏陀の教説を理解するために非常に重要な鍵が多くあるように思えます。
特に、三宝や五根・五力、七覚支、そして四無量心の関係が解読できるので、本当に貴重な経だと思います。
五根・五力は
信⇒精進⇒念⇒定⇒慧
です。
いわゆる信仰を説かなかったのが仏陀ですので、五根・五力の最初に『信』がきていることに違和感がありました。
『布喩経』によると、欲張り、物ほしがり、悪意、怒り、妬み、偽善、冷酷、嫉み、吝嗇、偽り騙し、裏切り、頑なさ、性急さ、驕り、怠慢、これらの心の汚れを捨離していけば(心の浄化)
①仏陀に対して絶対の信を持つに至る。
②仏陀の説く法に対して絶対の信を持つに至る。
③サンガに対して絶対の信を持つに至る。(仏法僧の三宝帰依)
すると、法にともなって、歓喜が湧いてくる。歓喜する者には喜悦が湧いてくる。喜ぶものは身体が軽安となる。軽安となれば楽しみを受ける。楽しみを受けたものは自然と定が生じる。(七覚支のうち、喜⇒軽安⇒定)
そうなったときに、智慧を生じる。(五力・五根の慧)
そのとき、彼は、
慈しみにつながる心をもって、あまねく一切を覆うて住する。
悲 につながる心をもって、あまねく一切を覆うて住する。
喜 につながる心をもって、あまねく一切を覆うて住する。
捨 につながる心をもって、あまねく一切を覆うて住する。
(四無量心)
これこそ感覚の世界からの出離である。
そのように知る時、
欲望の惑わしから心が解脱し
存在の惑わしから心が解脱し
無智の惑わしから心が自由となって
彼はみずから自由であるとの自覚を生じ
『わが迷いの生はすでに尽きた』と知るに至る。
(解脱)
この経により、三十七菩提分法がすべてつながりました。
そして、後世には色界の最下層の境地として、解脱までには至らないとされた四無量心が、慧であり、解脱に至るとされていたことがわかりました。